キッチンのレイアウトと聞くと、料理や片付けにおける利便性をイメージする人が多いでしょう。
たしかに、それらの面への影響は大きいですが、他の面にも作用することを忘れてはいけません。
特に重要なのは、家族と快適に過ごせるスペースづくりです。
同じように見える間取りの家でも、キッチンのレイアウトが異なるだけで、印象は極端に変わることも少なくありません。
言い換えると、そこに素敵なアイデアを盛り込むことで、住まい全体がワンランク上の空間になるということです。
それほど難しい話ではないので、大まかなコツを把握しておくと良いでしょう。
コツの中心になるのは、台所を独立したスペースにしないことです。
調理は女の仕事であり、裏方としてこなすのが当たり前と言われた時代もありました。
とても酷い話ですが、古い家の中にはそのコンセプトに基づいて建てられているものも多いです。
夫は居間でくつろぎ、その間に妻はせっせとご飯を作っていたというわけです。
完全な時代遅れであり、そのような家には真の安息は訪れません。
料理を一つのイベントと見なし、家族みんなで取り組むようなスタンスが必要です。
それを実践するには、できるだけダイニングとの動線をスッキリさせることが欠かせません。
よくある失敗として、大きな冷蔵庫を出入口付近に置くことが挙げられます。
家族が飲み物などを取りにくる際、そちらの方が手っ取り早く済ませられるからです。
しかし、出入口に圧迫感が出ると、空間的に遮断されているような感覚になります。
誰かが冷蔵の扉を開けていると、人が通りにくくなることも問題の一つです。
このようなデメリットがあるので、冷蔵庫などの大きなものを出入口付近に配置するのは良くありません。
とはいえ、自由に置き場所を決められるほど広くないというケースもあるでしょう。
その場合は台所も形状を考慮したうえで配置することが必要になります。
日本の家屋で伝統的に多いのは細長いタイプです。
このような形状だと、必然的に横に並べる形になってしまいます。
この場合は出入口だけでなく、すべてのスペースにおいて圧迫感が出やすいです。
吊り下げタイプのワゴンにするなど、いくらでも収納を増やす工夫の余地はあるでしょう。
しかし、吊り下げタイプであっても、圧迫感を大きくする要因になることを忘れてはいけません。
前方と後方の両方に吊り下げワゴンを設ける人もいますが、頭上が極端に窮屈な環境になってしまいます。
ですから、目線の配置だけで判断しないことも大事なコツの一つです。
いったん台所から出て、全体を見渡せる状態でチェックすると良いでしょう。
その時点で狭そうと感じるなら、実際にそこに入るとより圧迫感が強くなります。
その他のコツとして、オープンキッチンにおけるカウンターへの配慮が挙げられます。
その前にシンクがある程度なら構いませんが、他のものを置いてしまうと活用しにくいです。
たとえば後付けの食器洗い乾燥機を置くと、料理などの受け渡しに支障が出ることになります。
視線も遮られてしまい、料理中に家族のだんらんが見ない場合もあるでしょう。
このように多様な面でリスクが発生するので、レイアウトには十分に気を使う必要があります。
足元に置く程度なら構わないという考え方もありますが、そのスペースを使用する人にとってはストレス源です。
一時的な置き場所にするなら大丈夫ですが、そうでないなら早急に配置を見直すのが得策です。
最も重要なのは料理を担当する人の動線であり、それを妨げるレイアウトはどこかに不備あります。
理想的といえるレベルに仕上げるには、リビングやダイニングへの空間的な連なりを意識しなければなりません。